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『光が死んだ夏』漫画家モクモクれんインタビュー

by Lynzee Loveridge,

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THE SUMMER HIKARU DIED

マンガ家、モクモクれん先生にとっては良い一年でした。デビュー作光が死んだ夏のアニメ化が決まったのは最近ですが、既に日米の人気漫画ランキングに何度もランクインしています。 夏のべたつくような暑さが漂う光が死んだ夏は、内向的な主人公よしきと、日本の田舎町での彼の日常についての物語です。難しい家庭生活に苦しんでいる中、親友のヒカルが死に別のナニカになって戻ってきたことで、物事がより複雑になっていきます。

人気急上昇中のモクモクれん先生に、物語の心情的テーマ、漫画家としてここまでの活動について、話をお聞きしました。

このたびのアイズナー賞の最優秀作家・アーティスト賞と最優秀米国版海外作品賞(アジア)のノミネート、おめでとうございます。最初にノミネートの知らせを聞いたときはどう感じましたか?

モクモクれん先生: 権威のある賞にノミネートされたと聞き、とても光栄に思います。日本だけでなく海外でも評価されていると分かり嬉しいです。

SNSでアートを共有してから、初めて出版した漫画が25万部近く売れるまで、モクモクれん先生の経験はどのようなものでしたか?長く困難なものでしたか、それともシンデレラストーリーのように感じましたか?

モクモクれん先生:出版社に声をかけて頂いてから売れるまでとても短かったので、実感が湧きませんでした。嬉しくも思いつつ、プレッシャーを感じました。漫画を描くことにも不慣れでしたので困難もありましたが、セオリーを知らなかったのが逆に幸いだった部分もあります。

光が死んだ夏の舞台は日本の田舎町です。この設定のどこに魅力を感じましたか? 小さな町で育った個人的な経験はありますか? ホラーの要素は田舎に適していると思いますか?

モクモクれん先生:日本の田舎町はホラーでは定番の舞台です。私はホラー作品が大好きですので、リスペクトも込めて伝統的なホラーのビジュアルを盛り込もうと思い、この設定を選びました。私自身は都会育ちですが、祖父母の家が田舎なのでそこでの体験が描くのに役立っています。父や母から聞いたあらゆる田舎のエピソードが作中で役に立っています。

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THE SUMMER HIKARU DIED

光が死んだ夏の魅力の一つは、登場人物たちの感情的な弱さだと思います。よしき と ヒカル、2人の関係として一番伝えたい感情は何でしょうか?

モクモクれん先生: 自分と異なる人と接するとき、人間は先入観を持ってしまいがちです。既存の価値観に当てはめて、本質を見失ってしまう。よしきも同じで、物語序盤では沢山の先入観を持って怪物の「ヒカル」と接します。ですが、物語が進むにつれ、その先入観は間違っていたことやもっと本質を見なくてはいけないことに気付いていきます。

人外である「ヒカル」は生前の光とは大きく違います。それどころか、人間にとって当たり前の感情や理屈が通じません。彼と交流するうちによしきは自分の内面にあった先入観を自覚していきます。よしきとヒカルの関係性はとても複雑です。ですが、先入観に捉われずに複雑なものとどう向き合うかはこの作品の大きなテーマです。これが「the emotional core」の答えになっているかはわかりませんが、二人の関係における大事なテーマではあると思います。

ホラーの多くは、よしきが ヒカル の中で感じるときのように、2人の少年間のエロティシズムとも融合しているようにも思えます。これらの瞬間の背後に深い意味はあるのでしょうか?

モクモクれん先生: 腹に手を入れるシーンなどは、エロティックに感じる人もいれば「気持ち悪い」と不快に感じる人もいるだろうと考えて描きました。どちらの感情も正しく、まさに主人公よしきの感じている感情です。「未知なるモノ」に対する感情は「恐ろしさ」だけでなく時に性的であったり、時に不快であったり、とても複雑なものであってほしいです。現実でも、自分にとって受け入れ難いモノほど性的に感じたり恐ろしく感じたりと、自分の本能的なものを呼び覚ます部分があるのではないでしょうか。

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THE SUMMER HIKARU DIED

ドッペルゲンガーの物語というアイデアはどのようにして生まれたのですか? モクモクれん先生にインスピレーションを与えた民間伝承やメディアはありましたか?ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』はご覧になりましたか?

モクモクれん先生: 見たことはないですが、気になっている映画の一つです。インスピレーションを受けたものはたくさんありますが、思考実験のスワンプマンについては初めて知った時からずっと考え続けていました。また、怪物が人間に成り代わる話は数多くありますが、怪物側の葛藤に強く焦点を当てた話が読みたいと思ったのがアイデアの出発点でした。

登場人物や彼らの経験の中に、モクモクれん先生のご自身の体験は反映されていますか?

モクモクれん先生: 想像や取材をもとに描いているところが大部分ですが、心理描写については自分の体験を少しだけ入れてリアリティを挙げています。残念ながら私は幽霊を見たことがないので、ホラーシーンに関しては日本の都市伝説などがモデルになっています。

光が死んだ夏は6月で第5巻が発売されました。これまでのシリーズで学んだ最も重要なことは何ですか?

モクモクれん先生: 漫画制作の話で言うと、サスペンスと心理描写のバランスは大切だと学びました。私はどちらも大好きですが、偏りすぎると読みづらくなってしまいます。どちらもバランスよく、テンポを重視して入れるように心がけています。

よしきと同じような思いを抱いているティーンエイジャーにアドバイスができるとしたら、どんなことを伝えたいですか?

モクモクれん先生: よしきは閉鎖的な田舎町で育ち、さまざまな生きづらさを抱えています。よそ者の母や不登校の妹、両親の喧嘩、そしてそれらに対する周囲の視線。さらには彼自身のジェンダーに関しても強く悩みを抱えています。彼は決して特別不幸なキャラクターでは無く、どこにでもある様な悩みを抱えた主人公です。そして彼が「ヒカル」というモンスターに向き合う時、彼自身にも向き合っていかねばならないのです。

世界中どこの国でも、ほぼすべてのティーンエイジャーは自分に向き合わねばいけない時が来ます。自分の認めたくない部分や矛盾した部分に立ち向かう必要が出てくる。それはきっと大人でもそうでしょう。よしきは理想的なヒーローではなく、そうした現実的な悩みに寄り添う主人公であってほしいと思っています。

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THE SUMMER HIKARU DIED

このシリーズが好評だったことを受けて、次はどのようなことをやりたいですか?

モクモクれん先生: 次回作はファンタジーを描いてみたいなと考えているところですが、ちゃんと決めてはいません。色々なジャンルの物語が好きなので新しいチャレンジを沢山したいです。

このシリーズは最近、アニメ化も発表されました。アニメについて、何かコメントはありますか?

モクモクれん先生: アニメ制作に関しては原作者としてしっかりと参加させて頂いております。制作サイドの方々と意見を交換しながら進めている最中です。原作にある大切な要素を変更することなく、よりグレードアップしたアニメを目指して頑張ります。楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

Translation for this interview was provided by Ken Iikura-Gross.



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